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◆事例報告

 

●テーマ:「乗合バスの持つ可能性について」

●報告者:國友正道奈良交通株式会社代表取締役社長

 

日頃、我々バス業界に対し、種々ご支援・ご協力を賜っていることをこの席を借り厚く御礼申し上げます。
また本日のシンポジウムに参加させて頂いたことをありがたく思っています。
モータリゼーションの急激な進展は交通渋滞を起こし、都市機能の低下、交通事故の増大、環境汚染等と多くの社会問題を発生させ、とくに交通渋滞により乗合バスは定時性・迅速性の喪失と信頼性がなくなり輸送人員は大幅に減少してきています。しかし、バスは国民生活において果たす役割は変わりなく、むしろ地球環境の改善や高齢者・身障者等の交通弱者の対策の面から今後益々公共交通機関として社会における重要性を増してくると思っています。本日は奈良市学園前地区における交通規制を中心としてバス活性化施策の実施状況と乗合バスの課題解決のためのマイクロバス活用状況について報告し、乗合バスの持つ可能性を探る一助にしていただければと思います。
奈良県の北西部に近鉄学園前駅があり、黒い線が交通規制区間、赤い線が当社のバス路線です。A地点から駅前のB地点まで南行きの一方通行規制、Cの地点からDの地点まで北行きの一方通行の路線となっています。何れも朝7時15分から8時15分の間で実施しています。学園前地区は昭和37年頃から住宅開発が進み人口が急増しており、大阪まで30分という立地の良さと便利さから現在では人口約10万人のベッドタウンとなっています。近鉄学園前駅での1日のバス乗降人員は約5万5千人で、電車利用者の約3分の2になっています。朝のラッシュ時(7:15〜8:15)の学園前駅でのバス発着回数は317回、11秒に1回という高頻度で運行しています。マイカー規制をしているので渋滞がなく、定時性と迅速性が確保されているため、旅客のバスに対する信頼性は増大しています。昭和60年3月25日から実施した交通規制の概要は、学園前駅に通じる南北道路の1本を対象に一般車両の通行を禁止し、バスの専用通行としており、日時については日曜・祝日を除く毎日朝7時15分から8時15分の1時間、北から南にかけては2?q、南から北にかけては1.1?qの駅までの計3.1?qの区間で一般車の乗り入れを規制しています。通行できる車両は、バス・タクシー・二輪車に限られています。この規制に至った経緯は、昭和58年以降の宅地開発により学園前周辺地域の人口が急増し、交通量も飛躍的に増大したため、当初は午前7時から8時30分の1時間30分の規制を目標としていました。この間に調べた近鉄電車の乗客(約13,000人)の60%に当たる8千人がバスを利用していた。また、同時間帯の学園前駅での乗合バスの発着回数は334回で16秒に1回という状態に加え、マイカーによる送迎が当該時間内に約千台流人していたため非常に混雑し、とくに駅前広場での混雑が激しく、バス運行の阻害要因となっていました。さらに通過交通や通勤通学のマイカーの急増が進み、このまま放置した場合、我々にとっても定時性・迅速性の確保が困難な状況に至ることも予想されたため、経営効率やサービス等の面から喫緊な課題となっていました。昭和58年3月に大阪地方陸上交通審議会の奈良県部会から奈良県における公共交通機関の維持整備に関する計画としてラッシュ時における学園前駅広場への自家用車の乗り入れ規制を検討するとともに長期的には道路の拡幅や駅前広場の整備等の改善策を検討する必要があるという内容の答申がなされ、これを頂き当社はこの推進を奈良県警察本部と奈

 

 

 

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